ヒトツバタゴ


「ええ、朝起きたら急に花見するから場所取ってこいって」



初めて見るその男性に肩を竦めて見せる



初対面のはずなのに、初めて会う気がしない男性とその後も話しながら時間を潰す




「にいちゃん、イケメンだからモテるでしょう」


男性の言葉に苦笑する



「本当に好きな女にはもう10年も気付かれずに友達やってますけどね」



知らない人だからかそんなことも話せてしまう時もあるよな



「にいちゃんみたいなイケメンでもそんなことあるの?」



驚く表情の男性とその後も他愛ない世間話をして時間が過ぎるのを待つ


人懐っこい男性は会話の引き出しをいくつも持っていて、退屈しなかった




「あ、きたきた!」と連れが来たことを知らせ、「おーい」と手を振る方を向いて驚いた



重そうなコンビニの袋を持って立ち止まっているさつきと目が合った


男性が待っていた家族はさつきの家族だったのだ



すぐに靴を履いて、さつきの家族に挨拶をしながらさつきの元に駆け寄りさつきの手からぶら下がった袋を取り上げる



ビールが大量に入った袋は男の俺が持っても重いと感じた


どんだけ飲むんだ…





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