ヒトツバタゴ


さつきもさつきでもっとキッパリと断れば良いものを…俺の弟だから気を遣ってるのか弟に全くダメージを与えられていない



「和幸」



いい加減、さつきの家族にも迷惑だから弟の暴走を止めることにする



「兄貴の彼女じゃないならいいだろ?」


顔を顰め肩をすくめる弟



「さつきはお前が遊びで手を出していい女じゃない。他を当たれ」



お前が遊んできた女とは違うんだよ


俺が10年間大事に守ってきたんだ


誰にも譲らない



怒りを含んだ俺の声にしんと静まり返る




「あらビールがもうなくなっちゃった〜!さつき、買ってきて」



気まずくなった空気を壊すさつきのお母さんの声にホッとする


さつきが財布を手に場を離れると今度はうちの母が「うちのバカ息子共がすいません、さつきちゃんすっごく美人だからあんな娘さん羨ましいです〜」と陽気に言ってまた花見という名の飲み会が和気藹々と再開された



しかし



俺の頭の中を占めるのは先程弟に向けて言ったことへの後悔


結果的に弟は大人しくなって酔っぱらったさつきのお兄さんに絡まれてるが、


さつきは…



言葉の解釈を間違えていれば傷付いているはず




「ちょっとトイレ」と言って立ち、靴を履いて屋台が並ぶ人混みの方へ向かう





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