ヒトツバタゴ
「さつき!」
俺を見て安堵の表情を見せるさつきの瞳に滲むものにやっぱり先程の言葉を勘違いしてるなと確信する
「ごめん、遅くなった」
さつきの持っていたビールが入った袋を奪い、手を掴み歩き出す
今走って来た方とは逆の人がいない方へ
公園内の桜がない一画にあるベンチにさつきを座らせ隣に座る
俯くさつきを真っ直ぐ見つめながら「ごめん」と口にするとさつきは顔を上げこちらを向く
「さっき和幸に言った言葉」
捕らえた視線を離さずに続ける
「さつきを守るために言ったのに、さつきを傷付けたら意味無いよな」
あの言葉はさつきを守るためじゃなくてさつきを奪われないように俺自身を守るための言葉だったとすら思える
「いいのよ本当のことだし」と言うさつきの言葉に申し訳なさでいっぱいになる
誰もが認める美人なのに、どうしてこんなに自己評価が低いんだろうな
「そんなに自分を卑下するなよ」
胸に大きな傷跡があるから?
美少女戦士ものオタクだから?
「さつきの胸の傷跡はさつきが生きている証なんだから」
傷跡は醜くなんてないし
美少女戦士ものオタクだってラグビーを好きな大也やカメラが好きな杏さんや佳香さんと変わりないじゃないか