ヒトツバタゴ


「そんなに長いお付き合いなんですね!」と目を輝かせているけど、何もないわよ…と心の中で答える





午後からも吉倉さんに業務を教えながら自分の仕事を片付けていく


休憩後に橘から渡された受注書は先に入力して管理部へ回したけど、残りの量を見るに本日も残業確定かしらね…とため息も漏れる






新入社員である吉倉さんを定時に帰し、残業して残った仕事を片付ける日々が3日続いた



幸い吉倉さんの覚えが良く、大方の業務は教えることができたので明日からは戦力になると期待も膨らむ









「さつき、今日は早く終わりそう?」


橘がそう声を掛けてきたのは吉倉さんが戦力になって順調に仕事が進み出した2日目の定時を5分程過ぎた頃



外回りから戻ってきて後処理を終わらせ、いつでも帰れます状態の橘が正面のデスクから微笑んでいる



「んーこのデータ送って、あとこれ持って行ったら終われるかしらね」


処理を終わらせた管理部に届ける分の受注書の束をマウスを操作していない左手で持ち上げて見せる



「じゃあ、俺がそれ届けてくるから片付けたらロビーで待ってて」


そう言って自分の鞄を持って回り込み私の手から受注書の束を奪い、オフィスに「お疲れ様です」と言って出ていった



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