ヒトツバタゴ
〜懇親旅行〜
お気に入りとなった限定のパスケースで改札を通ると憂鬱な満員電車の出勤も少しだけ気分が上がる
「さつき、今年は懇親旅行参加だろ?」
相変わらず近過ぎる橘から今週末に控えた新入社員のための懇親旅行の話が出てきた
毎年、5月の中旬の週末を利用して新入社員と直属の教育係は強制参加で残りの社員は自由参加という新入社員との仲を深めるための旅行
私は新入社員の時に前日の夜に熱を出して参加せず、その後も参加拒否してきたから今年が初参加となる
「うん」
本当は行きたくない
宿泊先が車で1時間程の温泉旅館
ということは大浴場でお風呂に入らなければならない
大して仲も良くない人たちに傷跡を晒すことになることが考えただけで憂鬱だ
「今年のレクリエーションの景品は豪華だって噂だよ」
旅行初日に行われるレクリエーションは毎年部署対抗バレーボールで女2人以上を入れた男女混合と決まっている
営業部は元運動部って人が多くいるから私は観戦に回るつもりだけど、元バレーボール部の橘は毎年駆り出されているから今年もかしらね
「そうなの?新型のテレビとか欲しいわね」
大学の頃から使っているテレビもそろそろ新しくしたい
豪華な景品という言葉に大きいサイズの高画質なテレビを思い浮かべる