君と会う時は


 疲れた体を引きずり、マンションの一室に帰り着く。

 冷蔵庫は今日は何があったか?・・・・いいや、面倒だし、インスタント麺で。などと女子力の低いことを考えながら、荷物を部屋の隅におろし、自分もソファにダイブした。

 体力の低下はあっという間。想像すらしていなかったのに、実感する年齢になってしまった。

 何にも考えずに仲間と幸せな未来を妄想していた学生時代に戻りたい。

 「・・・無理だけどさ」

 ポツリと呟いてから、美花はいつものように、スマフォのsiriを起動し、ネットサーフィンを始めた。

 明日の運勢、一週間の天気、お気に入りのブランドのHP、料理ブログ・・・毎日必ずチェックするサイトを次々に閲覧しては、閉じてを繰り返していく。

 あまりに空虚な時間だが、美花はこれをしないと、あまりに余暇が退屈で仕方ないだ。

 そう思ってから、ギクッとする。

 生徒たちに「ゆっくり休んで」などと宣言しておきながら、自分は明日から始まるお盆期間中の予定が、全く入っていなかったのだ。

 これは物凄い事態だ。

 休みを利用して職場の残業に取りかかったとして、お盆の間に全く遊ばず家にこもるなんて、今までの自分からしてみれば言語道断。

 美花は派手ではないが、交友関係はそれなりにあるので、友だちとランチやカラオケくらいは普段から楽しんでいたい人だ。

 家族旅行、友だちとお出かけ、彼氏とデート・・・世間が充実した休みを満喫しているというのに、自分は何もなし。

 心臓を抉られたような気分だった。

 何年も前に終わったはずの青春を、まだ送っているような錯覚を抱いていたが、今こそ完膚なきまでにその幻想は打ち砕かれた。

 「年齢」というヘビーな現実が、美花の脳裏にズドンと落ちた。 
< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop