プルースト

先輩と恒生は真反対だなってそう思う。

先輩は夜だけど恒生は昼だ。
先輩が月だとしたら恒生は太陽だし。
先輩は大人でクールな印象だけれど、恒生は悩みとは縁がないような印象だ。
ただ単に、私がよく話す男性が先輩と恒生の二人しかいないからそう思えるだけなのかもしれないけれど。

こうして電車に乗っていると、もしかして先輩も電車に乗っていないだろうか、なんて気になってしまう。



きっと私は会えなくたって
同じ空間に先輩がいたらすごく幸せになれるんじゃないだろうか。


そう思ったら少し頬が緩んだ。


「何お前、急ににやけて。なんかあった?」

「えっ?えっ、あ、いや、ちがくて。大丈夫。何にもないよ」


そうかぁ?と訝しげに覗き込まれる。
恒生の力強い視線にじっと見つめられてしまうと
それはもうヤンキーに睨まれたも同然だ。
たとえ幼馴染だとしても、怖い。


女の子の中にはその男っぽい力強い目がいいという人もいるらしい。
いや、らしいではなくてわりと多くいる。
不良みたいでいいそうだ。
恒生は見かけこそいかつい不良だが、中身はそんなのではないし、喧嘩もしない。



幼馴染の男の子に淡い恋心を抱いている先輩の話なんてできないもんなぁ、と電車の外を見る。


河川敷に沿って桜が見事に咲いている。
薄桃と若葉の緑と小川のきらきらとした済んだ水色がとても綺麗。


「…春だな」

「春だねぇ」



先輩も毎日この景色を眺めながら電車に揺られているのだろうか。
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