空の色をおしえて

「だけど……」

掠れた声が震えていく。




「あの夜学校の前に1人で残されて、僕は……とてもひどいことを考えたんだ……。兄さんさえいなければ……なんて」



雲の切れ間から、月の光が差し込む。

淡く照らされた隼人君は、泣いていた。
透き通った瞳から流れる涙が頬を伝い、海に消えていく。

秋人と同じ、切なくなるほど美しい瞳。

この穏やかな人が、こんなに荒々しく心を乱すようなことがあるなんて知らなかった。

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