空の色をおしえて
調節された室温に慣れた体に、生ぬるい空気がまとわりく。
ここ数日は、今夜のようにすっきりとしない天気が続いていた。
でも、雨は嫌いじゃない。
夏なんてずっと来なければいい。
道路を挟んだ反対側の歩道に、うつむき加減で傘をさす隼人君がいた。
細身のデニムに誠実そうな白いシャツ。
軽く耳にかかった伸びかけの黒髪が湿気をおびて、少し重そうに見えた。
薄暗さと少し霧のような雨のせいか、その姿が秋人の面影と重なり、一瞬、声をかける勇気を失う。
何度も見ているはずの光景なのに、戻らない時間が呼び覚まされ、息が苦しくなった。
今朝、あの夜の夢をみたせいかな。