空の色をおしえて





「隼人君……」


高まる鼓動を抑え、やっと声を絞り出す。

そんなわたしの小さな動揺に気がつくことなく、彼は無邪気な笑顔で返してくれた。

胸の奥がチクチクする。

罪悪感に似た後ろめたい感情を振り払うように、小走りで駆け寄った。


「美咲ちゃん、お疲れ様」

「うん、隼人君もお疲れ様。雨なのに待っててくれてありがとね。でもそろそろ大学が忙しくなるだろうし、大変じゃない?」


「ううん、まだ2年生だからね、そんなに忙しくないよ。それに……僕が美咲ちゃんに会いたいだけだからいいんだ」




差しかけられた傘に気づかないふりをして、彼に背をむける。

鞄から折り畳み傘を探しだし、家までの道を歩き出した。

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