空の色をおしえて
「美咲ちゃん、あのさ……」
隼人君は、言い出しづらそうに話し出す。
「夏に大学で学園祭があってね。宣伝用のポスターを描いてくれる人を募集してるみたいでさ。やってくれたり……する?」
湿気で少し濡れた前髪をかきあげて、遠慮がちにこっちに視線をなげかけた。
薄暗い住宅街の外灯では、きっとわたしの表情は見えない。
「……ごめん。もう道具も全部捨てちゃったから」
「そ、そうだよね、こっちこそごめん。聞いてみただけだから、気にしないで」
気まずい空気が漂う。
霧雨のはずの雨音が、急に大きく聞こえた。