ホタル


この間と同じ石段を登っているはずなのだが、今日は格段に足取りが軽い。


まずはきちんと神様に挨拶をする。


これも彼が教えてくれたことのひとつだ。


手短に挨拶を済ませ、お社の裏へ向かう。






サラサラと水が流れる。


陽の光を反射してキラキラと川が輝き、私のところまで光を届ける。




大きく息を吸い込む。


「……一縷くん…!」






「…おはよう、奏ちゃん…」


私はバッと振り返る。


「一縷くん…!」


自然と頬が緩む。


それを見て、一縷くんはくしゃっと顔を崩して笑う。


「久しぶり!よく来たね。」


相変わらずの綺麗な顔で笑うので、私はつい見惚れてしまう。


「……持ってきた?」


「…!うん、勿論!」


私はポシェットからビー玉を取り出し、彼に差し出す。


「よく出来ました!」


彼は私の頭をポンポンと軽く叩く。


「もう…子供じゃないんだから!」


赤くなりながらも反抗する。




「……そうだね…もう…キミは子供じゃない……」


一縷くんは表情を曇らせる。

だがすぐに明るくする。


「奏ちゃんは今年で…」

「16歳だよ!」

「……そっか…」


今度は私の頬を撫でる。

「大きくなったね…


あと、綺麗になった…」


とても愛おしそうな…なんと言うか…


とにかく歯痒くなるような甘い視線を受け、私は目を逸らす。


「な、何言ってんの…」


「ふふっ照れてるんだ。かわいいなぁ」


「ちょっと…!」


彼は悪戯っぽく笑う。




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