ホタル
「さぁ、今年は何をしようか。」
「うーん…もうネタは切れてるな…」
毎年私たちは、この川の近くで遊ぶのだ。
でも、初めて出会ってからもう6年になる。
本当に何もすることがない。
「ねえ、じゃあ一縷くんの話を聞かせて?」
「僕の話?」
「そう。…よく考えたら、私一縷くんのこと何も知らないなーって。」
彼は再び表情を曇らせる。
「僕のことなんて聞いても面白くないよ…」
「うーん…面白くなくてもいいの。
ただ一縷くんのことが知りたいの。」
彼は困ったような顔をする。
「うん…そっか…」
「ねえ、ずっと思ってたんだけど、一縷くんの苗字ってなに?」
彼は一瞬固まる。
「えっと……秘密?」
そういってくすりと笑う。
「ええーーっ
じゃあ、誕生日は?」
また彼は一瞬固まる。
「えっと……秘密?」
「え、また?
うーん…じゃあ、好きな食べ物は?」
今度はほっとした顔をする。
「カレー。」
あ……
今思い出した。
そうだ。
私は、一縷くんが美味しそうにカレーを食べるところが好きだったからカレーが好きになったんだっけ…
「そうだったね、一縷くんはいつも美味しそうにカレー食べてたよね!」
「ええっ!?そうかな…?」
彼は少し照れくさそうに手で口元を隠す。
その後も幾つか質問をしたり、されたり……
楽しい時間を過ごした。
「あ、そろそろ帰らなきゃ。
お母さん達が心配する。」
私が切り出す。
彼は残念そうな表情を浮かべる。
「そっか…明日も…来てくれる?」
「勿論!」
彼はほっとした顔をする。
「じゃあ、また明日、一縷くん!」
「うん。また明日、奏ちゃん!」
私は手を振りながら道を戻る。
あれ、一縷くんって
いつもどこに帰ってるんだろう。