ホタル


いつもより早い時間のせいか、夜の涼しさを残して、神社全体がひんやりとした空気に包まれている。


昨日は何も言わずに一縷くんとの約束を破ってしまったので、彼と会うのが少し怖い…







「い、一縷くん…居るかなー?」











「おはよう」

「うわっ!!!」





び、びっくりしたー。

いきなり後ろから声かけられるたんだもん。

心臓をバクバクさせている私を見て、彼は声を上げて笑う。




(良かった…そんなに怒ってないのかな?)


彼の様子を見て少しほっとしたが、やはり昨日のことは気になってしまい…



「あの…さ、昨日はごめんなさい!」


私は勢い良く一縷くんに頭を下げた。



「…許さない」




「…だよね…」





「嘘だよ」




「え?」




また一縷くんは笑い始めた。


「もー奏ちゃんってば…ははっ
どうせお母さんに家の手伝いをさせられてたとか、そんな感じでしょ?」


「うそっ…なんで分かるの?」


「分かるよ、奏ちゃんのことなら。」


胸がキュッと苦しくなった。


「俺、信じてるから、奏ちゃんのこと。
だってさ、小さい時の約束を何年も何年も覚えてくれてて、毎年俺に会いに来てくれるんだよ?」


信じてるよ、と言いながら私の頭をポン、と撫でる。
< 26 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop