ホタル
いつもより早い時間のせいか、夜の涼しさを残して、神社全体がひんやりとした空気に包まれている。
昨日は何も言わずに一縷くんとの約束を破ってしまったので、彼と会うのが少し怖い…
「い、一縷くん…居るかなー?」
「おはよう」
「うわっ!!!」
び、びっくりしたー。
いきなり後ろから声かけられるたんだもん。
心臓をバクバクさせている私を見て、彼は声を上げて笑う。
(良かった…そんなに怒ってないのかな?)
彼の様子を見て少しほっとしたが、やはり昨日のことは気になってしまい…
「あの…さ、昨日はごめんなさい!」
私は勢い良く一縷くんに頭を下げた。
「…許さない」
「…だよね…」
「嘘だよ」
「え?」
また一縷くんは笑い始めた。
「もー奏ちゃんってば…ははっ
どうせお母さんに家の手伝いをさせられてたとか、そんな感じでしょ?」
「うそっ…なんで分かるの?」
「分かるよ、奏ちゃんのことなら。」
胸がキュッと苦しくなった。
「俺、信じてるから、奏ちゃんのこと。
だってさ、小さい時の約束を何年も何年も覚えてくれてて、毎年俺に会いに来てくれるんだよ?」
信じてるよ、と言いながら私の頭をポン、と撫でる。