ホタル
幼い私が恋に落ちるのは当然だった。
5歳年上の彼は、自分よりもずっと大人に見えて、とても頼りになると感じていたし
何よりも、容姿だけでなく心も綺麗な彼に惹かれたのだ。
「さぁ、そろそろ帰らなきゃ。お母さん達が心配するよ?」
私は彼の服の裾を引く。
「まだ…一緒にいたい!」
彼はそっと私を抱きしめる。
「また来年、この場所で会おう。
大丈夫!僕はずっとこの街にいるよ。」
「……」
それでも首を縦に振らない私に彼は何かを差し出す。
「はい、これ。僕の宝物のひとつだよ」
それは少し水色の入った透明なビー玉だった。
「え…これ…」
「これを見て、僕との約束を忘れないでいて?…離れていても、僕はキミのことが好きだよ。」
「…っ!!」
今度は一緒に赤くなる。
「…私も…好きよ…大好き!!
約束、絶対忘れない!」
そしてふたりで指切りをした。
毎年お盆に帰ってきたらここに来ること。そしてビー玉を持ってくること。
とてもドキドキした、10歳のあの日。