ホタル
「こんにちはー」
古い引き戸のドアを開け、玄関に入る。
「おかえり。よぉ来たね、元気やった?」
玄関へ祖母が出てくる。
「うん!久しぶりー」
「かおりー、来たばっかで悪かとけどさ、魚ば捌くとば手伝ってくれん?」
「はーい」
かおり、とは母の名前だ。
「奏、高校生活はどがんね。」
祖母が私に尋ねる。
「うーん、勉強が大変かな…」
「あっはっはっは!頑張らんばたい!」
母が台所から顔を出す。
「お母さん、これどがんするとっけ?」
「あーそいはねー…」
私は邪魔になるかな…
「ちょっと散歩してくるねー」
「はーい、遅くならんとよー」
母はすっかり方言に戻っているようだ。
そこまで難しくない方言だから、私も今度使ってみようかな…
履き慣らしたスニーカーに足を入れ、扉に手をかける。
ガラガラッ
扉を開けたとたん海風が頬を掠める。
さぁ、どこへ行こうかな…