緋女 ~後編~
って、何を言ってるんだろう。
………自分で考えて恥ずかしい。
別の楽しい話題はないだろうか。
しかし、前までどんな風に話していたのか意識してしまうと、急に何もしゃべれなくなる。
私とケイとの会話なんて、私が試されてるか、バカにされるか、説明されてるか、怒られているかのどれかで、全て受け身だったような気もしてきた。
共通の話題なんてなかった____あっ‼
「そっ、そういえばライ…………王子は元気?」
危ない。秘密の名を口にしてしまうところだった。
「___気になりますか?」
「うん。城に戻って楽しみなことなんて王子と会えるくらいだしさー」
嘘だ。
ライサーは泣くかもしれないけど、ケイと会う方が楽しみだった。
が、そんなことに気を回していた私は、自分の失言には気づかなかった。
「………誰が会えるなんて言いました?」
ケイがそう冷たい声で責めるまで。
そうだ。ケイはライサーのことが大好きなのだ。そして私は目障りな存在。
私は記憶を消されて、都合の良いようにケイのあの憎悪の目を風化していた。
ケイは私の首をしめてきた。それが現実だ。
思えば、だから私はケイから逃げるように学校へ行くことを承諾したのだ。
ケイにこれ以上嫌われるのが怖かった。
でも、ここで前のように流されたら同じことを繰り返すだけだ。
私は前とは違う。
「じゃあ、会えないって誰が決めたの?」
相変わらず風は強くなびいているはずなのに、この声だけははっきりと響いたように思った。