緋女 ~後編~



って、何を言ってるんだろう。
………自分で考えて恥ずかしい。


別の楽しい話題はないだろうか。


しかし、前までどんな風に話していたのか意識してしまうと、急に何もしゃべれなくなる。

私とケイとの会話なんて、私が試されてるか、バカにされるか、説明されてるか、怒られているかのどれかで、全て受け身だったような気もしてきた。



共通の話題なんてなかった____あっ‼



「そっ、そういえばライ…………王子は元気?」


危ない。秘密の名を口にしてしまうところだった。


「___気になりますか?」

「うん。城に戻って楽しみなことなんて王子と会えるくらいだしさー」


嘘だ。
ライサーは泣くかもしれないけど、ケイと会う方が楽しみだった。

が、そんなことに気を回していた私は、自分の失言には気づかなかった。


「………誰が会えるなんて言いました?」

ケイがそう冷たい声で責めるまで。


そうだ。ケイはライサーのことが大好きなのだ。そして私は目障りな存在。


私は記憶を消されて、都合の良いようにケイのあの憎悪の目を風化していた。


ケイは私の首をしめてきた。それが現実だ。


思えば、だから私はケイから逃げるように学校へ行くことを承諾したのだ。

ケイにこれ以上嫌われるのが怖かった。


でも、ここで前のように流されたら同じことを繰り返すだけだ。



私は前とは違う。




「じゃあ、会えないって誰が決めたの?」


相変わらず風は強くなびいているはずなのに、この声だけははっきりと響いたように思った。



< 9 / 21 >

この作品をシェア

pagetop