【短編】生け贄と愛
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 晴れ渡る空。

豊かな大地に鐘の音が鳴り響く。


丘の上に立つ教会から、男女が出てきた。


真っ白なドレスに、美しいヴェールを被った花嫁。

真っ白なタキシードに身を包んだ花婿。


どちらも容姿が美しく、衣装に負けないくらいに美しい笑顔を浮かべていた。


「ロゼ」


シルヴェスタが腕の中のロゼに囁く。

くすぐったそうに身を捩るロゼ。


「愛してる」


優しさに溢れたアメジストの目を見つめ、ロゼは唇から言葉を紡ぐ。


「私も、シルヴェスタ。愛してる」


そういって伸び上がり、愛しい彼に口づける。

少し驚いた彼だったが、それは深いものに変わった。


幸せな、幸せな。


二人だけの結婚式。


彼と彼女が認められる道は長い。

しかし遠すぎることは無いだろう。

それが苦痛に思えることも無いだろう。


同じように長い寿命の生き物になった彼等は、末長く共に歩んでいくだろう。


アカネと言う名の友の名を心の片隅に。


彼女が亡くなったことを誰も知らない。

心の片隅にある名前を大切だと知っていながら、彼等は正体を知らない。


それでも彼等は幸せだ。


「もう一生、離さない」


唇の上で囁かれた言葉に、紅薔薇の君は美しい笑顔を浮かべるのだった。


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