明日、君を好きになる
プロローグ
チリンチリン…
鈴の音のような軽やかな音と共に、入口のドアがゆっくり開き、彼が入ってくる。
店の入り口近くにあるマガジンラックから、今朝入れたばかりの新聞を手に取ると、いつものように、店内奥のテラス席に向かう。
『おはようございます』
カウンターの内側から声をかけると、通りすがる瞬間に、軽くこちらに視線を寄こして、笑顔を見せる。
『おはよう、いつものよろしく』
『はい、かしこまりました』
早朝6時。
平日の月曜から土曜まで、雨の日も晴れの日も、同じ時間に“彼”は、やってくる。
天気の良い日は、決まってテラス席の一番左側。
雨が降れば、テラスに近い、カウンター前の席に座る。
年齢は30代前半だろうか。
その身に着けている服装からして、どこかのバーで働いているバーテンダーのようなのだけれど、都会のオフィス街で、お店が密集している駅から、かなり離れたこのカフェに、なぜかわざわざ毎日やってくる。
駅の近くには、もっと早くから開いている店など、たくさんあるはずなのに。
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