明日、君を好きになる
『あんたはもう売れてんだから、探す必要ないでしょう?』
『もちろん、私じゃないよ、二人のために、私はいつでもアンテナ張ってるの!』

明らかに自分が楽しんでいる様子の朋美に、結婚願望ゼロの千春は、『私は必要ないからね』と、相変わらずきっぱり。

当然、朋美の矛先が、私だけに向けられた。

『江梨子は、もちろんあるでしょ?結婚願望』
『私?ん~どうかな?相手がいれば考えるのかもしれないけど…今は、いいかなぁ』

あまり乗り気のない返事を返すと、『え~二人とも、張り合い無~い』と、大げさに肩を落とす。

イイ男探しにノリノリの朋美には悪いけれど、今の私には、相手を探すことはもちろん、結婚など考えている時間はない。

私の中の、立ち止まっていた時間が動き出し、もう迷わずに目指す目標ができたのだから。

『皆様、大変長らくお待たせしました』

祭壇の端に立つ進行役の式場スタッフに、入り口中央の厳かな施しがされている扉に注目するように促される。

『まずはご新郎様が、先にご入場されます』

アナウンスと同時に扉が解放され、広めのピロティに、本日の主役の一人である藤川君が、姿を現す。

天窓からの陽光にさらされながら、緊張した面持ちで、ぎこちない笑みを浮かべる藤川君。

その様子が滑稽で、何故か、どっと笑いが起きた。

列席者の間にひかれている白いカーベット(バージンロード)を一人で歩く藤川君に、職場の同僚や大学の友人たちが、祝福の言葉とともに、”緊張しすぎだぞ”、”もっと肩の力を抜け”という激励が、飛び交う。
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