明日、君を好きになる


平日のこの時間。

道が空いてたので、前に来た時よりも比較的早くお店に到着。

気の良い運転手は、お店の近くに駅までのバスがあることまで親切に教えてくれた上で、急いでいるなら呼びなさいと、自分の名刺をくれた。

住宅街にひっそりと佇むそのお店は、この時間になると、真っ暗闇に浮かぶ森のコテージと言った様相で、全体的に淡いオレンジの光を纏い、暖かな雰囲気を醸し出してる。

あの夏の暑い日差しとは対象に、吹く風も冷たく、肩にかけていたストールを前でしっかり合わせて、身を丸めながら入り口に向かう。

木製のドアを開け店内に入ると、前回同様、森林の香りがふわりと薫る。

ちょうどディナーの時間帯で、数名のグループが待つ中、店員に声をかけられた。

『いらっしゃいませ、お一人様ですか?』
『ハイ』
『では、こちらへ』

待っているグループを他所に、別途案内されるも、客達が皆、嫌な顔をしないところを見れば、そういったシステムだとわかっているのだろうか。

店員についていくと、小野崎さんと食事をした広いフロアを横切り、厨房脇の細い通路を進むと、突き当り左側の階段を登り、天井の高い少し解放されたフロアに出た。

位置的に、厨房の真上になるのだろうか?

右側の庭に面した窓際すべてに、作り付けのカウンターが備わり、広めの間隔で座り心地の良さそうな椅子が並ぶ。

座席の目の前の窓からは、ライトアップされた庭園が広がり、その先に1階フロアが見えた。

『こちらでよろしいでしょうか?』

既に数名の先客がいる中、空いた席に案内され、座り心地の良い椅子に座る。

早速食事と飲み物を注文し、店員が階下に降りていくと、落ち着いて、ゆっくり周りを見回した。
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