明日、君を好きになる
『そのノートは、自由に思ったことを書き込むもので、皆様自由に使われてます。お客様も、日頃言えないちょっとしたことなどありましたら、気晴らしに使ってみてくださいね』
ちょうど、飲み物を運んできてくれた店員に聞けば、そう答えが返ってきた。
なるほど…お一人様専用の、ちょっとしたストレス解消ということだろうか。
料理が運ばれてくるまでの間、何気なく、ペラペラとページをめくる。
こんなデジタルな世の中、文字を書くなんて、そんなアナログなことがウケるのかな?と思ったけれど、意外にもほぼ白紙だと思っていたノートは、たくさんの文字で、埋もれていた。
書いてある内容は様々。
日記のようなものから、詩や歌の歌詞のようなもの。
中には日常の不平不満や、誰に向けてなのか、想いの籠った愛の告白などが綴られている。
…と。
とあるページで、手が止まった。
”エリ”
それは、いかにも男性的な筆跡の、少し角ばった特徴のある文字で書かれている、短い文章。
エリコなのか、エリカなのか、【エリ】なんて、世の中に五万といる。
それなのに、最初の一文字が、自分の名を呼んでいるように感じて、目が離せなくなる。