明日、君を好きになる
その後ろ姿を見送りながら、洗い物をしている渚ちゃんに声をかけた。

『誰か待ってるの?』
『ん?別に、誰も待ってなんかいないわよ。どうして?』
『今日、なんか入り口ばっかり見てない?』
『あ~そうね、言われてみれば…今日曇ってるから、天気が気になってるのかも。無意識に外、見ちゃてるのかもしれない』

いつもより少しぎこちない笑みが、妙に怪しく感じる。

『あ、コーヒーお代わりかな?私が行ってくるわね』

店内奥のテーブル席のお客様に呼ばれ、オーナー自らすばやくコーヒーのデカンタを持つと、お客様のところに向かう。

今日の渚ちゃんは、朝からそわそわしていて、何だか落ち着かない感じがしていた。

…天気が気になって?

…う~ん、それだけじゃない気もするけど…。


チリンチリン…


真後ろで、来店者を知らせる鈴の音が響き、反射的に『いらっしゃいませ』と声をかけた。

『よお、お前マジでやってんだ』

入ってきたのは、どう見てもカフェが似合わない程の、厳つい大男。

渚ちゃんの弟で、従兄の海成(カイセイ)。

相変わらず、凄みをきかせるように話しかけてくる。

『驚いた。海ちゃんでもこういうところ来るんだ』
『うるせぇ…アイツは?』
『渚ちゃん?いるよ…って、なんだ、海ちゃんのこと待ってたんだ』
『は?』
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