明日、君を好きになる
『お待たせしました』
注文された、ホットコーヒーとロイヤルミルクティーを提供すると、不躾に海ちゃんが聞いてくる。
『お前、教師目指すんだってな』
『何よ、似合わないって言いたいんでしょ』
『…いや、そうじゃねぇ』
コーヒーを一口飲むと、意外にも驚くほど柔らかな目で、『…案外向いてるかもな』とこちらを見る。
『お前は覚えてねぇかもしれないが、ガキん時、俺が算数のテストで一桁取ったら、お前、”私が教えるから”って…』
『そうそう!あったわね、そんなこと。エリィまだ2年生だったのに、5年生の算数必死に勉強して、海に教えてたわ』
カウンターの内側から、渚ちゃんが補足。
咲ちゃんも菜緒さんも『それ凄い!』と、驚嘆する。
言われてみたら、そんなことあったような…?でも、確かそれでも…
『でも海ちゃん、点数、全然上がんなかったんじゃなかったっけ?』
『結果は良いんだよ、結果は』
バツが悪そうに、ふてくされるも、『要するに、お前のお節介は、教師向きじゃねーかってことだ』と、つっけんどんに言い放つ。
『応援してるってことよね?海成』
『全く素直じゃない男ねぇ』
隣に座る菜緒さんに代弁され、渚ちゃんに突っ込まれ、憮然とした顔で、もう一度コーヒーを口に運ぶ海ちゃん。
何となく照れているのが伝わって来て、こっちまで気恥ずかしくなってしまう。
『海ちゃん、ありがとうね』
『フン…まあ、頑張れや』
『うん』