明日、君を好きになる
『昨日は、本当にありがとう』

そういうと、今度は真剣な眼差しで、続ける。

『ちょっと最近、仕事が立て混んでてね、このところあまり眠れていなかったんだ…特に、昨日は疲れが半端なくて、正直、君のくれたチョコに救われたよ』
『大袈裟ですよ』
『いや、ホント。いい歳した男が、いくら欲しくても、一人でチョコ買うのって、結構勇気いるからね』

そう恥ずかしそうに笑う彼に、案外普通の感覚もあるのねと、ほんの少し親近感が沸き、思わず、ずっと疑問だった質問を聞いてしまう。

『お仕事、バーテンダーさん…ですよね?』
『あ~』

何故か彼は、一瞬言い淀み、自分の服を見てから『…まぁね』と、答える。

『あ、今、引いたでしょ?』
『引く?』
『俺の職業、聞いて』
『何故そう思うんですか?』
『だってほら、バーテンダーって、女性が彼氏にしてはいけない3Bの一つなんでしょ?』
『?そうでしたっけ?私には、きちんと仕事としてやってるだけで、凄いと思いますけど…』

言ってから、一お客様に対して、随分、素の自分で話してしまっていたことに気が付き、即座に『おかげで、毎日来ていただいているので、素晴らしいお仕事です』と、笑顔で付け加える。

彼は、『確かに、違いない』と、また笑った。

実際のところ、3Bはともかく、今の中途半端な自分と比べたら、何でもきちんと仕事として続けている人は、凄いと思っていた。
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