明日、君を好きになる
途端に、抱きしめる力が強くなる。

『…良かった』

頭上で聞こえた、小さく呟かれた独り言さえ、私の胸を震わせる。

黒いダウンコートの胸元に顔を埋め、伝わる鼓動の速さから、小野崎さんの緊張が伝わってくる。

しばらくして、どちらからともなくゆっくりと離れると、小野崎さんの両手が私の髪を捉え、梳くようにそのまま頬を包み上げると、私の額に小野崎さんの髪がふわりと触れた。

黙ったまま瞳を閉じると、瞬間、柔らかなキスが落とされる。

触れるだけの優しいキスは、どうしようも無いほどの幸福感と共に、極度の恥ずかしさも伴い、唇が離れた瞬間、小野崎さんの腕から飛び出して、鉄柵の前で両頬を抑える。

『ちょ、ちょっと待って…えっと…私…』

半分、羞恥心でパニックになりながら、こういう時ってどうしたらいいんだっけ?と、過去の拙い恋愛を呼び起こしてみるも、答えは見つからない。

目の前の夜景は変わらず美しく、このロマンチックな雰囲気が、余計に恥じらいを増してしまう。

真上から、クスクス笑う声がしたかと思ったら、今度は後ろから抱きすくめられてしまう。
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