明日、君を好きになる
『言っておくけど、同棲って意味じゃない。もちろん俺的には一向に構わないが、君が嫌なら空いてる部屋があるから、そこを使ってもらって構わないし。マンションは駅近だから、4月からどこの学校に決まっても、通勤にも便利だろう？』
『え…ちょっ』
『ちなみに俺の方は、基本的に週休二日。職種柄、自宅で仕事もできるような勤務体制で、時間的には結構融通が利くから、君が忙しい時は、俺の方でいろいろ協力できるしね。実家に戻って、親に気を遣うよりは、その方がずっと気が楽じゃないかな？それに…』
『ちょ、ちょっと、待ってください！』

先を進める小野崎さんの会話を、途中で遮った。

『ん？』
『あの、何か誤解してる様なんですけど、私、まだ採用試験これからですよ？』
『え…』
『いくら何でも、４月からなんて無理です…これから準備して、来年度の正規の採用試験を目指すつもりですし…それに、今更実家には戻るつもりなんて最初からありません。できるだけ安いアパート探して引っ越すだけで…って、小野崎さん？』

目の前では、小野崎さんが鉄柵に力なくもたれて天を仰ぎ、『やられた～』と、大きな溜息を吐く。

その白い息が夜空に舞う。

そうして次には、お腹を抱えて笑い出した。

『小野崎さん？…だ、大丈夫ですか？』
『ああ、ごめん。いや、ホントよく考えれば、可笑しいよね』

ひとしきり笑いが収まると、大きく深呼吸をする。

『いつだったか、渚さんに聞いたんだ。君が4月から先生になるって。その為に、年内にはカフェも辞めて、実家に戻るってね…で、ちょっと焦った』
『嘘！そんなの嘘ですよ。渚ちゃん、なんでそんな…』
『ああ、すっかり騙されたなぁ…』
『まさか、それでバーを辞めたり、仕事も…』
『それは関係ない』

即座にきっぱり否定する。
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