明日、君を好きになる
カフェが休みである、8月末の日曜日。

会える確証など、何もなかった。

どちらにしても、その日は夕方からクライアントと打ち合わせが入っていたから、会えたらラッキーくらいの感覚で、駅前を少しふらついてみる。

そして、ほどなくして偶然目に入った君の私服姿。

俺がどんなに驚いたか、君には想像もつかないだろう。

これは神様がくれた運命かもしれないと、本気で思った。

しかもよく見たら、見知らぬ女性二人にナンパされ、婚活パーティーに連れていかれそうになっている。

気が付いたら、俺は君の手を取って、その場から連れ去っていた。

君は、バーテン姿じゃない俺がわからず、挙句に痴漢呼ばわりまでされたけれど、こちらはこちらで、いつもと雰囲気の違う君にドキドキしていた。

もちろんそんなことは、表には一切出さず、このチャンスとばかりに、君をランチに誘うことに成功した。(その陰には、渚さんの援護があったことは、否めないが…。)

この日、俺はある程度、自分のことを君に話してしまった。

知り合って間もない女性に、ここまでプライベートを明かすなど、ここ数年全くなかったことだ。

この時点で、君をどう思っているかなど、正直わからなかったが、それでも君に、本当の自分を知っていて欲しかった。

俺の話を聞きながら、何度も驚く君の姿が、可笑しくて可愛くて、凄く楽しかった。

正直、もっと一緒にいたいと、思ってしまったくらいに。

帰りに、駅まで送る車の中で君に言ったことは、素直な気持ちだった。

君は、俺の前で笑顔を見せてはくれるけれど、それはカフェの客に見せるものと同じものなのかもしれない。

本当に心の底から笑った顔は、恋人しか見れないのだろうな…と思うと、なんとも言えない気持ちが沸いてきた。
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