明日、君を好きになる

動き出す心

時刻は午後3時半過ぎ。

この日のランチタイムも終了し、店内もまったりした時間帯。

自分はもう上がる時間なので、更衣室兼休憩スペースで帰り支度をしながら、ちょうど休憩中だった渚ちゃんを捕まえて、小野崎さんについて聞いてみた。

『小野崎？…あぁ～恭介君のことね』

案の定、渚ちゃんも彼を知っていて、小野崎さんが毎朝６時過ぎに来店すること、決まってモーニングを注文すること、仕事はバーテンダーをやっていることも、よく知っていた。

聞けば、このお店が開店した当初からの常連さんらしい。

『何？もしかして、好きになっちゃったとか？』
『そんなわけないでしょ』
『あら、何でよ？彼、結構イイ男じゃない？』

そう言いながら、彼女は、私物のマイボトルに、ミルクを大量に入れたアイスカフェオレを手にして、部屋の入り口の柱にもたれて、面白そうに話をする。

『渚ちゃん、私、顔で選んで良いほど、もう若くないよ。それに、ああいう感じの男は、なんか信用できないし』
『それって、彼がバーテンやってるから…とかじゃないでしょうね？』
『職業は関係ないよ。それより、いきなり女性を名前で呼べちゃう、あの軽率な感じが嫌なの』
『エリィ…相変わらず、ガード固いわね』

自分のことは棚に上げて、呆れた風に笑う渚ちゃん。

彼女こそ、ガードが固すぎて、撃沈した男性を何人見たことか…。