明日、君を好きになる
私服へ着替え、腰に巻いていたカフェエプロンと、制服のシャツを、洗濯用のランドリーボックスへ入れると、ロッカーから自分の鞄を取り出す。

『…で、恭介君、他になんか言ってた?』
『何かって?』
『ううん、何も話してないならいいの。まぁ悪い子じゃないし、そう邪険にしないであげてね』
『もちろん分かってる。大切な常連さんだもんね』

このお店のオーナーは渚ちゃんだし、そこで働かせてもらっている以上、仕事中は個人的な私情は挟まない。

話しながら、フロアで履くスニーカーから、今年購入したばかりのオフホワイトのアンクルストラップに履き替えると、スニーカーをロッカーに入れ、扉を閉める。

『じゃ、私、上がるね』
『あ、エリィ』

呼ばれて、出口に向かっていた足を止め振り返ると、さっきの表情から一転して、少し真面目な面持ちで『仕事とは関係ないんだけど…』と続ける。

『最近、家に連絡してないでしょ?』
『あ~…うん』
『昨日、叔母さんから電話あってね。心配してたよ?一応、元気にしてるって、言っておいたけど…たまには連絡してあげないと』
『うん、わかってる……近いうちにするね』

私は曖昧に返事をして、“今日は急ぐから…”と、早々に店を後にする。

実際にこれから、大学の時の友人と会う予定があるので、嘘ではないけれど、正直今は避けたい話題だった。
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