明日、君を好きになる
陽はゆっくり傾いているものの、まだ日差しは強く、駅まで続く歩道の、出来るだけ日陰を探して歩く。

そういえば、どれくらい両親に連絡していないだろう?

思えば、このカフェで働き始めてから、実家で1回会ったきりで、それから数か月間、一度も連絡を取っていないかもしれない。

地元の高校を卒業して、他県の大学に進学したことを機に、念願の独り暮らしを始めて、6年。

大学卒業後に地元に戻っても、実家には帰らず、独り暮らしを続けていた。

電車で数駅ほどの距離なのに、こんなに帰らなかったことは、今まで無かったかもしれない。

我が家はいわゆる、代々公務員の家系で、今だって、両親揃ってずっと役所に勤めている。

遡れば、曾祖父まで、公の職に就いていたらしい。

2年前には、二つ下の弟も、国家試験に受かり、晴れて公務員の仲間入り。

かくゆう私も、例外ならず、大学卒業後は、地元の市の職員として働いていた。

そう、半年前までは…。





『え!!江梨子、役所辞めちゃったの!?』
『嘘でしょう!?もったいなさ過ぎでしょ??いつよ?いつの話よ??』

大学で同じゼミを取っていた、朋美と千春は、私の告白に驚きを隠せない様子。

約一年ぶりに会い、互いの近況報告をしている中、私の近況を話した途端、二人して椅子から立ち上がり、身を乗り出して聞いてくる。

『半年くらい前かな?…っていうか、ちょっと二人とも、落ち着いて、ね?席、座ろう』

予約してたお店は、若い子が行くようなにぎやかな店ではなく、女性に人気な洋風居酒屋。

店内も明るく、各テーブルには、天井から可愛らしいオレンジのライトがぶら下がっていて、何ともオシャレ。

そんな、オシャレ空間を堪能する余裕もなく、二人は一旦座ったものの、相変わらず興奮は治まらないらしい。
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