明日、君を好きになる
いや、たまたま“彼女”が車に乗る機会が無かっただけなのかもしれないし…などと、いろいろと頭を巡らせて、つい次の言葉を発せずにいると、ちょうど目の前の信号が赤に変わり、小野崎さんは静かにブレーキをかけ、ステアリングに両腕をかけて、こちらを見た。

『エリ』
『は、はい?』
『言っとくけど、俺、普通に好きだからな』

“ドキッ”

『…女性のこと』

どうやら恋愛対象は女性だという意味らしい。

一瞬、告られたのかと、錯覚してしまいそうになり、動揺するも、相手に悟られないように笑顔を作って『もちろん、分かってますよ』と、答える。

安心した様子の小野崎さんの助手席で、次に自分の脳裏に浮かんだのは、外見的にはこれだけ申し分もないくらいの容姿を持ち合わせていて、仕事的にも女性と知り合う機会はいくらでもあっただろうに、何故?という素朴な疑問。

やっぱり、内面的に、何か問題があるのだろうか?と、思わず勘ぐってしまいそうになる。

私の心中を知ってか知らずか、隣では、小さなため息と共に、『渚さん、本当に何にも話していないんだな…』と、つぶやく声。

その声で、さっきの出来事を思い出し、

『小野崎さんって、渚ちゃん…オーナーと、親しいんですか?』
『あ~うん、まあそれなりに…いろいろお世話になってるからね』
『…いろいろ』
『気になる?』
『別に、気になってるわけじゃ…』

聞かれて、また素直じゃない自分が出て来ては、探求心をもぎ取っていく。
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