明日、君を好きになる
『まだオープンしたばかりで、渚さんも、今の君ぐらいの頃かな?』

確かに、彼女は今の私と同じくらいの頃に、カフェを立ち上げている。

もっとも渚ちゃんの場合は、学生の頃から自分のお店を持つことが夢で、その為の知識や資格を得るために、ずっと早い段階から行動を起こしていた。

そう考えると、やっぱり凄いと思わざる得ない。

小野崎さんはその頃を思い出しながら、話してくれているようだった。

『それこそ結構な早朝でね、まだ開店前だったのだけど、明かりがついていたから何気なくお店の中を覗いてみたら、渚さんが突然出て来られてね。開口一番、“あなた、今にも死にそうな顔してるわよ”って。よっぽど、疲れた顔してたのかな?俺』

自嘲しながら、またコーヒーを一口。

彼女なら、100%有りそうな話だ。

『その時はホントに食欲もなくて、確かコーヒーを1杯頼んだだけだったんだけど、そのコーヒーと一緒に、彼女、板チョコを1枚くれてね』
『え?』
『そう、君と同じように “疲れてる時は甘いものが良いのよ”って』

『本当に君たちよく似てるよ』と、面白そうに笑った。

これには、驚いた。

渚ちゃんも、同じようなことをしていたなんて。

『その時の、彼女のあっけらかんとした物言いに、何だか救われてね…以来、バーテンの仕事帰りに寄らせてもらってるんだ』

ちょうど、渚ちゃんとの出会いを聞き終わったところで、小野崎さんが注文した大皿のサラダが運ばれてきた。
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