明日、君を好きになる
『贅沢な悩みですね、世の男性陣に恨まれますよ?』
『…オイオイ、これでも結構真剣に困ったんだぞ?断るにしても、相手はお店にとって大切なお客様だし』
『断らないという選択肢だって、あったんじゃないですか?』
『それは、無い』

なぜか、きっぱりと断言するように言い放つ。

あまりに強い言い方に、視線を前に向けると、眼鏡の奥の真剣な眼差しで、

『今はまだ、恋人を作る気はないから』

そう言うと、今度はにこりと笑って『今はね』と繰り返す。

『お待たせしました』

メインのお料理が運ばれ、小野崎さんの視線は、そちらへ移る。

こちらは、お料理よりも、さっきの話の続きが気になって仕方ないのだけれど、小野崎さんの方はよほどお腹が空いていたのか、早速自分の注文した魚介のトマトパスタに舌鼓を打つ。

『あの…それで、渚ちゃんが協力って何を…』
『ん?あ~彼女には、俺の恋人になってもらってるんだ』
『え?』
『…あ、このパスタ噂通り絶品だ』
『ちょっと、恋人って…』

さらりと言った爆弾発言に、開いた口が塞がらない。

目の前では、笑顔で『エリも少し食べる?』と、小野崎さん。

それどころじゃない。
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