明日、君を好きになる
『見つかりそう?』
『いえ、なかなかいい条件のお部屋が無くて…』
『いや、部屋じゃなくて』
『?』
『エリのやりたいこと』

問われて、一瞬考え『まだ具体的には…』と、曖昧に答える。

『そうか。焦ることは無いよ、まだ若いんだし』
『若くはない…ですよ』
『…いや、年齢じゃないな。いくつからだって、自分のやりたいことを始めるのに遅いなんてことは無い…と、俺は思う』
『持論ですか?』
『俺のモットーだね』
『この前テレビで同じようなこと言ってる人いましたよ?』
『あ~アレね、俺が教えたんだよ』
『小野崎さん言うこと、全部嘘くさい』
『ひどいな』

お互い、吹き出して笑い合う。

すべてを聞いてしまったからか、行きの車内の重苦しい空気感はなく、打ち解けた会話に不覚にも、何だか楽しいと思ってしまった。

『…少しは俺に心開いてくれたかな?』
『え?』
『今日、いつもみたいに、あんまり笑ってなかったからさ。君の笑った顔見れて、ホッとした』
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