明日、君を好きになる
運転しながらも、チラリとこちらを見る小野崎さんの柔らかな眼差しに、胸がキュンと痛くなり、咄嗟に視線を外し正面のフロントガラスへ向き直る。

『お店での私は、営業用です』
『なるほど、俺と一緒ってわけだ』
『私だって、仕事とプライベートは使い分けてますから』
『フッ、それ大人の常識だよね』

信号が赤になり、車が停止する。

駅近くだからか、目の前の歩道を、歩行者がせわしなく横断していた。

『…恋人しかみれないんだろうな』

不意に、小野崎さんが、まっすぐ前を向いたままつぶやいた。

『?』
『エリの本当の笑顔』

ステアリングに両腕を置き、その上に顎を乗せ、引き続き前を見続けるその横顔は、少し拗ねてるようにも見える。

『ちょっと、羨ましい…かもな』
『な、何、言ってるんですか?』

思わず、声が裏返る。

次の瞬間フッと笑うと、いつもの軽い調子で聞いてくる。

『彼氏、欲しくないの?』
『別に…特には…』
『婚活には興味あるのに?』
『ソレまだ言いますか?』
『ゴメン、冗談だよ』
『今は、そんなこと言ってられる身じゃないですから』
『それもそうか…』

信号が変わり、車はゆっくりと駅前のロータリーに入っていく。
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