明日、君を好きになる

午後4時過ぎ。

ちょうど店内も落ち着いてきた頃、カウンターの内側で作業をしていると、渚ちゃんに声をかけられた。

『エリィ、今日はそろそろ上がって』
『え?まだ1時間もあるよ?』
『いいのよ。病み上がりだし、明日からまたオープンお願いするんだから、少しでも身体休めて、万全にしておいてほしいし』
『でも…』
『そうですよ、江梨子さん。今日は無理せず、早めに帰って、身体休めてください』

咲ちゃんにも促され、結局二人の心遣いに甘えて、今日は通常よりも早めに上がらせてもらうことにする。

帰り支度をして、裏口から出ようとしたところで、咲ちゃんに『これ、渚さんから』と袋を渡され、中身を見ると、店頭で販売しているテイクアウト用のアイスカフェモカとブラックアイスコーヒー。

聞けば、渚ちゃんからの快気祝いだとか。

『ありがとう…でもなんで二つ?』
『ブラックの方は、お友達の方に…って言ってましたけど?』
『友達?』

咲ちゃんは、にっこりを微笑んでそういうと、『じゃ、私、戻りますね』とフロアに戻っていく。

もう一度渡された袋の中身を見て、”お土産は嬉しんだけど、すぐ飲めないのに氷を入れるなんて、薄くなっちゃうのに…”と、渚ちゃんの親切心に心の中でボヤきながら、裏口の扉を開け、次の瞬間その意味を知ることになる。
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