明日、君を好きになる

『時間通りだね、エリ。お疲れ様』

目の前の通り沿いに、つい先日乗ったばかりの鮮やかなブルーの車体の前で、渦中の小野崎さんが私服姿で立っていた。

あまりの唐突な登場に、心臓が飛び出てしまうかと思うくらいに驚く。

『…なんで、小野崎さんがここに?』
『今朝、渚さんに言われてね。病み上がりの君を自宅まで送迎するようにって』
『えっと…私、大丈夫です。自分で、歩いて帰れますから』
『そうは行かないよ。送らせてもらわないと、俺が叱られる。言ったろ?契約上、渚さんには逆らえないだ』

そう笑いながら、どうぞと助手席のドアを開ける。

それでも、躊躇を見せてしまうと、『もしかして俺の車に乗るの、抵抗ある?』と問われ、思いっきり横に首を振ると、観念したようにお礼を言って車に乗り込んだ。

車内は、既に快適な温度に保たれ、先日乗った時同様シトラスのさわやかな香りが漂い、心地良さを倍増させる。

小野崎さんは、運転席に座るとすぐ、後部座席から『寒かったら使って』とブランケットを手渡してくれた。

濃紺ながら、チェック柄で可愛らしい。

『それ、妹のなんだ…実家に行くと、良いようにタクシー代わりに使われる。それも、勝手に置いて行かれた』
『妹さん、いくつなんですか?』
『高3、一回り以上離れてる』
『JK!お兄さん大変だ』

小野崎さんがJK女子にタジタジになってる様子を想像して、思わずクスクス笑ってしまうと、後頭部を軽く小突かれ『想像しない!』と、叱られる。

ドキッ

ダメだ…やっぱり意識してしまう。

たった一瞬小突かれた場所が、熱を持ったように、ポッと熱くなったように感じてしまう。
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