明日、君を好きになる
なんだか、安心した。

新しいことに挑戦するのは、他でもない自分だけれど、誰かが理解してくれて、応援してくれることの心の支えは大きい。

父もホッとしたのか、ビールでも飲みたい気分だと言い出し、母が冷えたビールを持ってきては、3人で乾杯する。

実家の窓からは、和樹が観に行った花火大会の打ち上げ花火が、かすかに小さく見えた。

ビールを飲みながら、清々しい気分でそれを眺める。

ふいに父が思い出したように、笑った。

『しかし、さっきお前が改まって話があるって聞いた時は、てっきりあっちの話かと思ったけどな』
『あら、お父さんも?私も、ちょっぴり期待しちゃったわ』
『何?あっちの話って?』
『もちろん、結婚の話に、決まってるじゃない』
『え!無い無い!あるわけないでしょ』

強く否定した私に、『渚ちゃんの話も他人事じゃなくなってきたな』と、両親ともに落胆する。

渚ちゃんもカフェを開店させた時って、こんな気持ちだったのだろうか?

今は、新しい目標に向けスタートをきって、少しの緊張とワクワクした気持ちが入り混じって、これだけで充分満たされている。

自分のやりたいことにチャレンジする高揚感と、恋愛のドキドキ感は似ているのかもしれない。

時々ふっと湧き上がってくる小野崎さんへの気持ちは、気づかないふりをしよう。

そのうち消えてなくなってしまえば、大した問題じゃない。

それよりも…と気持ちを切り替える。

もう、立ち止まってはいられない。

方向性を定めただけで、やることは山積みだ。

教員を目指すにはそれなりに準備もある。

第一現役の頃からだいぶ時間が経ち、知識だって低下しているに違いなく、これから採用試験までの期間で、そのブランクを埋めるため、専門知識を猛勉強しなければならないのだから。
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