明日、君を好きになる
ランチタイムが過ぎ、テイクアウトのお客さんの対応を終えると、渚ちゃんからテーブル席のお客様へ、コーヒーのお代わりをお持ちするように言われ、彼女が既に用意しておいたコーヒーをトレイに乗せ、指示された席に持っていく。

『コーヒーのお代わりお持ちしました』
『ん?…ああ、ありがとう』

熱心に見ていた、パソコンの画面から視線を挙げたその男性の顔を見るなり、トレイに乗せたコーヒーを落としそうになる。

『お、小野崎さん!?』

咄嗟に店内の柱時計をみて、今が午後2時前であることを確認してしまう。

『いいね、そのリアクション…ってことは、まさか今気づいた…とか?』

面白そうに笑いながら、コーヒーを受け取ってくれる小野崎さん。

今朝会った時の、黒服バーテンダー姿の彼とは一転し、プログラマー仕様の姿で来店している小野崎さんの話だと、もう既に30分以上は店内にいたらしく、二重に驚いた。

確かにこの席は、カウンターからだと柱の陰になって見えづらいとはいえ、この間フロア内は何度も行き来していたのに…。

『この時間帯に、俺は現れないって、思ってた顔だな』
『いえ、そんなことは…』

図星を言われ、下手に濁すと、また笑われた。
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