明日、君を好きになる
いけない。

自分としたことが、これじゃ、公私混同もいいところだ。

幸い今朝も、まだ小野崎さん以外のお客様がいないから良かったものの、こんなところを他のお客に見られたら、それこそ誤解を招いてしまう。

『ではごゆっくり…』と、早々に立ち去ろうとするも、今度は小野崎さんの方から、『あ、エリ、ちょっといいかな?』と、呼び止められてしまう。

『何でしょう?』
『明日の日曜、時間ないかな?』

また、こちらの気持ちなど考えもせず、『美味しい店見つけたんだ。一緒にどう?』と、軽い口調で聞いてくる。

『…明日は、前に話した友人の結婚式なので…』
『じゃ、来週…そうだな、もしだめなら平日の夜にでも…』

今日は珍しく食い下がる、小野崎さん。

その執拗な誘いに、閉じ込めたはずの自分の心がぐらぐら揺れそうで、さっさとこの会話を終わらせたくなり、少し突き放すように答える。

『小野崎さん』

我ながら、思いのほか冷たい声が出た。

『ん?』
『私、前にも言いましたけど、恋人作らないって公言している人と遊ぶほど、暇じゃないんです』

自らの心にも釘をさすように、ハッキリと言い放つと、意外にも小野崎さんも納得したのか『ああ、そうだったね』と、つぶやいた。
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