明日、君を好きになる
心臓は、バクバクと波を打って、落ち着かない。

国語の読解力には、絶対的な自信があるのに、いまさっきの小野崎さんのセリフが、自分の頭の中でうまく理解できない。

明らかに動揺している自分自身に、今が仕事中であることを言い聞かせ、カフェ店員の顔に戻ると今入って来たお客様に声をかける。

『いっらしゃいませ、お一人ですか?』

来店者は、早朝には少し似合わないくらい濃い目の化粧をした、美しい女性。

女性の魅惑的なスタイルが強調されるような服に、ショートパンツからなめらかな素足が惜しみなく出され、上には今流行りの透け感のあるロングのガウンを着こなしてる。

少しお酒の匂いがして、なんとなくそういったお店の女性らしかった。

濡れた髪をかきあげながら、『あなたが、”なぎさ”って子?』と、不躾に聞いてくる。

『いえ、私は…』
『凄い美人だって聞いたけど、大したことないじゃない』
『え…』
『恭介はみんなのものでしょう?何、独り占めしようとしてんのよ』

渚ちゃんと勘違いされ、挙句にわけのわからない理由で詰め寄られると、いつの間にか、カウンターにいたはずの小野崎さんが近くにいた。
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