明日、君を好きになる
『飲みすぎだよ、ミサさん』
『…恭介?』

すっかりバーテンの顔に戻って、対応する小野崎さん。

小さく『ごめん。今日は帰るよ』と、私から彼女を引き離す。

『何よ、やっぱりこの女が』
『彼女は違うから…ほら、とりあえず外に出よう』

それでも、ミサと呼ばれた彼女は納得していない様子で、何か言いたそうにこちらを睨むも、小野崎さんに肩を抱かれて、店から出ていく。

一人残された店内から、通りを歩く二人を見つめ、咄嗟に入り口にあったビニール傘を手に持つと、小雨の降る中、傘もささずに歩道を歩いていく二人を追いかけて、呼び止めた。

『あのッ、コレ使ってください』
『…エリ』

直ぐに小野崎さんが気づき、立ち止まる。

『ありがとう、でも、すぐタクシーつかまえるから…』
『いえ、返さないでいいので、使ってください。彼女、風邪ひいてしまいます』

そういうと、女性を支えていない方の手に、無理やり持ってきた傘を持たせて、今度は彼女の方に向き直る。

『あの、私、違いますから』
『エリ』
『私なんかが、小野崎さんの恋人のわけないですから…安心してください』

にっこり微笑んでそう言うと、呆然とする二人を置いて、もぬけの殻にしてしまったカフェに急いで戻る。
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