春が来たら、桜の花びら降らせてね

「辛いこと、話してくれてありがとう」

「冬菜……やっぱり、冬菜は優しいな。俺はその優しさに、いつも救われてる」

夏樹君が私の頭に手を乗せた。
これ、夏樹君が私によくする仕草だなと、ぼんやり考える。

子供みたいに思われてるのかも。
それは、なんだか切ないから、もっと君に頼られるような大人の女性になりたいと思った。

「な、冬菜」

「うん?」

「琉生の真似するみてーで、アレなんだけどさ。冬菜の一日、俺にくれね?」

「……え?」

私の一日を夏樹君に?
それって、一緒に出掛けようって意味だろうか。

その考えが間違っていたら、もう一生夏樹君の顔を見られなくなるほどの赤っ恥をかくことになるので言えないけれど。

「勝った褒美に、冬菜の日曜日がほしいって言ったら怒る?」

心臓の音が、体育祭の声援に負けないくらいに大きく騒ぐ。

その言い方はズルいなと思った。
怒るわけがない。
だって私、休日も君と一緒にいたいと思ってるから。

「冬菜?」

夏樹君は催促するような、懇願するようなニュアンスで私の名前を呼ぶ。

切なさが、胸を甘く締め付けた。
まるで会いたいと言われてるみたいで、なんだかドキドキしてしまう。

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