春が来たら、桜の花びら降らせてね


「そんで今は……不思議そう?」

なのに、夏樹君の一言は、的確に私の本心を言い当てる。

そう、不思議で仕方ない。
夏樹君は、私が喋らないことを変に思わないの?

初対面の人が私に抱く最初の違和感は、言葉を発さないことだ。

「っう……」

無意識に、どうしてなのかを尋ねようと口を開いていた。

けどやっぱり、漏れる声は言葉にならない。

伝えたい言葉全部が喉に詰まるような息苦しさを感じながら、内心驚いた。

あれ、私……。
今、夏樹君に自分から話しかけようとした?
もう話さない、どうせ話せないって、わかってるはずなのに。

自分の行動に驚いてる時だった。

「俺、お前の顔ガン見しとくから、話さなくてもいいぞ」

夏樹君の言葉にもっと驚かされる。

「……あ……」

話さなくてもいい。
そう言った言葉の真意はどこにあるのだろう。

まるで、私が話せないことを知ってるみたいに言うんだな。

それに、ガン見って……。
もろもろ、夏樹君はどういう意味で言ったんだろう。

問うように夏樹君を見上げれば、目の前に太陽が落ちてきたような眩しい笑顔が返って来る。

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