春が来たら、桜の花びら降らせてね
「じゃあ、行こうか」
「っ……!」
この人、強引だ。
私の返事なんて待ってない、どうしよう!
何もできずに、男性に手を掴まれそうになったその時だ。
「冬菜!」
「あっ」
そこへ、ゴールデンレトリバーを連れた夏樹君が現れた。
私の所へやってくると、男性から引き離すように、夏樹君は私の腰を抱いて引き寄せる。
夏樹君……!?
その行動に、触れる体温の熱さに、心臓が破裂しそうになった。
いけない、夏樹君はただ私を助けようとしてくれているだけだ。
なのに私、場違いにもときめいてしまった。
「待たせて悪いな、つーわけで、彼女がお世話になりました」
「なんだよ……男待ちなら、そう言えよな」
そう言って、男性はそそくさと去っていく。
夏樹君、今彼女って……私を守るために嘘をついてくれたんだ。
その優しさに嬉しさと切なさを同時に胸の内に抱きながら、私は夏樹君に曖昧に微笑む。