春が来たら、桜の花びら降らせてね

「すげー嬉しいんだけど、俺、夢見てねぇ?」

「え……あ、ふふっ、現実だよ」

良かった、喜んでくれてたみたい。
緊張が一気に吹き飛んで、私は張りきって鞄からサンドイッチとお茶の入った水筒を取り出した。

「あ、レジャーシートとか、持ってくればよかったね」

お弁当のことばかり考えてて、肝心なレジャーシートを忘れてきちゃったな。

少し腰を浮かせると、芝生の草がスカートについてしまっていた。

後で叩くのが大変そうだと思いながら、仕方なくもう一度腰を落とそうとした時だった。

「あ、冬菜は俺の上着の上に座れ」

夏樹君は腰に巻いていた上着を、芝生の上に敷いてくれる。

「え、汚れちゃうよ!」

「俺は男なんだから汚れてもいーんだよ。でも、冬菜はせっかく可愛い恰好してんのに、汚れたらもったいねーだろ」

「えっ」

夏樹君は首の後ろに手を当てて、恥ずかしそうにそう言った。

カッと顔に熱が集まるのが、自分でもわかる。

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