春が来たら、桜の花びら降らせてね

「……ほ、ほら、座れって!」

「あ、はい!」

しどろもどろになっている夏樹君に肩を軽く押されて、上着の上に腰を落とす。
可愛いって、言ってくれた。

今日はずっとタンスの肥やしになっていた紺色の、ノースリーブワンピースを着ている。

デートとかそういうんじゃないのに、恥ずかしけれど、夏樹君と出かけるからと少し気合を入れてしまった。

そういう夏樹君はグレーのTシャツと黒のスキニーパンツに、今私が踏んでいるチェック柄の上着を腰に巻いた、オシャレな恰好をしていた。

いかにも今時男子という感じで、隣に並んで自分が浮いていないかが、かなり心配になる。

「夏樹君も、すごくカッコイイよ」

「なっ……殺し文句かよ」

「……え?」

夏樹君はなぜか、片手で顔を覆ってしまった。
そして、何かに耐えるように悶えている。

え、夏樹君……?

心配になった私は、夏樹君の顔を下からのぞき込むようにしてのぞき込んだ。

< 127 / 277 >

この作品をシェア

pagetop