春が来たら、桜の花びら降らせてね
「……ほ、ほら、座れって!」
「あ、はい!」
しどろもどろになっている夏樹君に肩を軽く押されて、上着の上に腰を落とす。
可愛いって、言ってくれた。
今日はずっとタンスの肥やしになっていた紺色の、ノースリーブワンピースを着ている。
デートとかそういうんじゃないのに、恥ずかしけれど、夏樹君と出かけるからと少し気合を入れてしまった。
そういう夏樹君はグレーのTシャツと黒のスキニーパンツに、今私が踏んでいるチェック柄の上着を腰に巻いた、オシャレな恰好をしていた。
いかにも今時男子という感じで、隣に並んで自分が浮いていないかが、かなり心配になる。
「夏樹君も、すごくカッコイイよ」
「なっ……殺し文句かよ」
「……え?」
夏樹君はなぜか、片手で顔を覆ってしまった。
そして、何かに耐えるように悶えている。
え、夏樹君……?
心配になった私は、夏樹君の顔を下からのぞき込むようにしてのぞき込んだ。