春が来たら、桜の花びら降らせてね

「冬菜は、本当はよく笑うんだな」

「え、そうかな?」

「少なくとも俺は、笑ってる顔ばっか見てる気がする」

「それならきっと……夏樹君のおかげだよ」

即答だった。
今までの私なら、絶対あり得なかった変化。

人を受け入れることが怖かった、心に踏み込んではいけないと思っていた。

私が相手を知ろうとすれば、逆に相手にも心をのぞかれる。

それは最も恐れていたことなのに、今は知ってほしいとも思う。

けれど、最近はそれでいいのだと思えるようになった。

君を知るための痛みも、変わっていく自分も、根本に君がいるから、好きになれそうだと思う。

「私が変われたのは、夏樹君と出会ったから」

あの、桜の雪を降らせてくれた入学式のこと、今も忘れない。

あれが、夏樹君が最初にくれたプレゼントだった。

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