春が来たら、桜の花びら降らせてね
「うっし、冬菜目ぇ閉じろ」
「え、う、うん」
ニコニコ笑う夏樹君の笑顔に押されて、私は言われたとおりに目を閉じた。
すると、「少し触るな」と耳元で囁かれる。
少しくぐもって聞こえた夏樹君の声に、心臓が早鐘を打ち始めた時、耳の上に何かが差し込まれる感覚があった。
なんだろう、ふんわりとした甘い香りがする。
目を閉じている分、余計に嗅覚が鋭く働いている気がした。
「おし、目ぇ開けてオッケー!」
「は、はい!」
パチッと目を開けると、夏樹君はニヒヒと不気味に笑った。
え、なに……?
そんな、いたずらに成功したみたいな顔されてもと、私は困惑しつつ、夏樹君の顔を凝視する。
「俺から、プレゼントな」
「プレ……ゼント?」
そういえば、耳の上、なにかがささってる。
私は鞄の中にある化粧ポーチから手鏡を出し、自分の顔を確認すると、耳の上にささる藍色の花に気がついた。